友人ご夫妻のお誘いで、初めてクルージングに参加した。コースは、カリフォルニアのサンディエゴからメキシコを南下してパナマ運河を通過し、カリブ海を巡り、フロリダ州のフォート・ローダディールというマイアミの近くの港までの船旅で、12月10日から24日までの14日間。友人の奥さんが語学堪能ということで、英会話のおぼつかない我が夫婦は安心してご一緒させていただくことにした。

サンディエゴ港での乗船
太平洋に沈む夕日
最初のフォーマルディナーへ向かうところ

クルージングは値段が高いというイメージがあって日本ではあまり馴染みが無いようだが、欧米では最も人気の高い旅行だといわれているそうだ。日本の船会社も日本郵船や商船三井などがクルーズ船を運航しており、旅行代理店も海外のクルーズ会社のツアーに、最近は力を入れているとのこと。クルーズの価格は、船室のランクによって決められている。

運航する船は、60,000tクラスから150,000tクラスまでコースによってさまざまだが、パナマクルーズは運河の巾によって91,000tが最大とのことで、今回乗船したインフィニティという船も91,000tで、全長が964f(約293m)、全幅が105.6f(約32m)。フロアから展望デッキまでが12階という、巨大ビルを横たえたような大きさである。
客室は1019室、最大収容客数が1950人で、1階のフロアから9階まで、4・5階のレストランやカジノ・劇場・バーなどのパブリック・スペースを除いた7フロアが客室となっている。また乗船しているクルーの人数は1000人との事で、乗客2人に対して1人のクルーがサービスに従事していることになる。

客室は4列で構成されており、海の見える外側と窓の無い内側とでは価格は異なるし、海側でも、デッキのある部屋とフィックスされた丸窓のみの部屋との違いや、上の階に行くほどクラスアップしていき、全部で18段階に分かれている。部屋の広さは、応接を備えたペントハウスやスイートルーム、ファミリー仕様の部屋を除いて、大半が2ベッドの約16〜18平方メートルで、日本のビジネスホテル並みのスペースである。
また、価格表には最低価格と最高価格が表示されており、申し込みの時期や申し込み状況によって価格が異なる変動相場制となっている。すなわち、人気が高いコースほど価格が上がっていき、直前で満室にならない場合は、最低価格を割ってべらぼうに安くなることも有るとのことである。 
価格の中には、食事代がすべて含まれており、その食事も朝・昼・夜の3食のみならず、ブランチやティータイム、夜食、デザート類に至るまでの一切の食事、コーヒーやティー、ジュース類の飲み物が含まれていて、アルコール類のみが別会計となっている。また船内で毎日のように催されるミュージカルショーや楽器演奏などのさまざまなエンターテイメントも費用の中に含まれている。

初めてのツアーということもあり、最上階のデッキ付の部屋を申し込んだが、部屋によっての値段が異なるが、それ以外のサービスはすべて一緒のため、部屋は寝るだけと割り切れば、クラスを落として、もっと気楽にクルーズを楽しむことが出来るということが分かった。ちなみに、今回のクルーズの価格は変動性の最低価格が1,500ドルで、ペントハウスの最高価格が13,750ドル (現地までの交通費を除く) 。14日間3食付の宿泊代、各種のエンターテイメントの観劇代、移動のための交通費を考えると、通常の陸上でのツアーに比べても決して高いものではない。

最初の停泊地カボサンルーカス(メキシコ)でのオプションツアー

乗船の手続き時に部屋のキーとなるカードが手渡されるが、このカードが船内でのクレジットカードの役割をし、また寄港地を出入国するためのパスポートの代わりもする。私は乗船早々にこのカードを紛失してしまいあわてたが、レセプションに届け出ると、すぐに紛失カードを無効にして再発行してくれた。以降、紛失しないようにカードホルダーに入れて首からぶら下げるようにした。
乗船手続き時には同時に、オプションツアーのメニューと申し込み用紙が手渡される。今回のクルーズの寄港地は、メキシコで4箇所、コスタリカ・パナマ・アルバで各1箇所の計7箇所で、それぞれに10種類近くのオプションツアーが紹介されている。
内容は、バスでの市内ツアーやマリン・レジャーを楽しむシュノーケリングやセーリング、中には海底を探索するサブマリン・ツアーなど、アドベンチャー・ツアーとして砂漠を駆けるオフロード・ツアーや、馬に乗って河川を散策する乗馬ツアーなどさまざまなメニューが用意されている。価格は30ドルくらいから高いものでも120ドル。初めてのツアーだったので、すべての寄港地のツアーを申し込んだが、旅なれた人たちは、寄港地周辺を単独で散策したり、のんびりとビーチで日光浴をする人も多いとのこと。

丘の上から見える停泊中のインフィニティ(カボサンルーカス)

乗客の8割方がシニア層で、残りの2割が若いカップル・家族連れ・中年夫婦など。中には車椅子を使用する体の不自由な人たちや、90歳くらいの高齢者の参加も数多く見られた。
クルーズは、ホテルがそのまま移動してくれるようなもので、陸上ツアーのように移動して、ホテルに着くごとに荷物の運搬やバゲージからの出し入れの必要が無く、寄港地に着いても、手提げひとつで出かけることが出来るため、無駄な体力や時間を費やすことが無いため、高齢者や身障者でも安心して参加できる。

土産店のポンチョを羽織ってポーズ
現地の子供たち(ウアトルコ/メキシコ)

乗船すると、ウエルカムドリンクと記念写真を撮影するフォトスタッフが待ち受けており、船の写真を背景にして記念写真を撮ってくれる。乗船の期間中、さまざまなシーンでこの撮影班が取材した写真が船内のロビーに展示され、希望者はその写真を購入することが出来る。
バゲージはあらかじめ手渡されたタグを貼って乗船前に預けておくと、クルーが部屋の前まで届けてくれるので、手提げ一つで乗船できる。
出港は想像していたドラやテープでの見送りなども無く、意外と静かに動き出す。しばらくすると、館内放送で乗客全員に救命具を着用してデッキに集合するようにとの案内があり、各室からオレンジ色の救命具を着た乗客たちがぞろぞろと集まってくる。緊急時の避難の説明が放送されるが、何をしゃべっているのか理解できないでいるうちに解散となって、またぞろぞろと部屋に戻っていく。

船室には毎日、船内新聞が届けられ、その日の予定やショップのバーゲン情報、エンターテイメントの内容、ドレスコードの案内などが記載されている。単語を引いたり、簡単な英会話を調べるのに電子辞書の携帯は非常に便利である。

夕食はメインレストランで行われるが、2000人からの乗客を1回でサーブできないので、2回に分けて行われる。ファーストシッティングが午後6時からで、セカンドシッティングが午後8時30分となっており、あらかじめ申し込み時にどちらかを選択する。また、テーブルも毎回決まった場所が設定される。外国の知り合いを作ろうと思えば、大テーブルを申し込むとクルーズの期間中、同じメンバーとの食事が出来るので、たやすく友人になれる。
テーブル担当のウエイターもソムリエも、毎晩同じ人が来るので、数日もすればすぐに親しくなる。我が家の場合、家内が以前に患った脳梗塞の後遺症で右手が不自由なため、料理を食べやすいように細かく切ってくれるように頼んだところ、インド人のウエイターが毎日目の前でカットしてくれた。
料理はフルコースで、前菜からスープ、サラダ、メインディッシュ、デザートにいたるまで数種類のメニューの中から選べるが、かなりの量があるので、すべてを頼むことも無い。特に、デザートは甘いケーキやアイスクリームなど、あまり食べる習慣の無い我が家ではもてあましてしまうので、いつも断っていた。お酒は、ワインはソムリエに頼むとメニューの中からお勧めを選んでくれる。ボトルで頼んでも残ればキープしてくれるし、グラスワインを気楽に頼むことも出来る。ワイン以外のお酒はやはり担当のウエイトレスが注文を伺いに来る。酒類は有料となっており、食後請求書にサインすれば、下船時にクレジットカードで決済される。

フォーマルディナーでの記念写真(同行の奥山夫妻と)

クルーズの期間中、メインレストランはドレスコードがあり、3つのグレードに分けられている。カジュアルはTシャツ・短パンは違反だが、それ以外は普段の服装で構わない。インフォーマルは、男性はスーツにネクタイ、女性はワンピースやパンツスーツなど。フォーマルは、男性はタキシード、女性はカクテルドレスやイブニング、和服などと定められているが、あまり厳しくは無い。フォーマルの日にダークスーツでも十分である。しかし、郷に入っては郷に従えで、日ごろ着慣れないフォーマルウエアを着用して食事をするのも、またクルーズの楽しさでもある。

朝食と昼食はリドデッキと呼ばれるテラス付きのレストランで、ビュッフェ形式で摂ることが出来る。パンやサラダやハム・ソーセージ、フルーツなど好きなものを選べるし、卵は注文すればオムレツや目玉焼きなどに調理してくれる。パスタも具を選んで調理してもらえる。日によっては寿司バーも開かれている。また、メインレストランでのシッティングでも食べることが出来るが、海を見ながらデッキで食べる食事はクルーズならではの楽しみである。
もちろんルームサービスで食べることも出来るので、自分の部屋のバルコニーで食べるのもまた楽しい。

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