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2023.03.31 更新

成年後見制度については、その利用を促進するための法律、すなわち「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が平成28年に施行されています。そして、その「成年後見利用促進法」に基づき、平成29年度から5年間を成年後見制度利用促進基本計画の第1期、令和4年度から5年間を第2期と位置づけ、成年後見制度を利用しやすくするための議論や法改正が順次進んでいます。

ここでは、成年後見制度利用促進基本計画に掲載されている課題のうち、一般の方に関係する5項目について、解説します。

1つ目は、任意後見制度の利用促進です。日本では、将来の後見人を自分で定めておく任意後見の利用が諸外国に比して低調で、年間1万件程度です。自分は認知症等にならないから後見の準備など必要ないと思っているのか、認知症になっても家族が何とかしてくれるから後見の準備など要らないと思っているのか、そもそも任意後見を知らないのか、費用や面倒が生じるので使いたくないと思っているのか、その他、任意後見を使わない理由は様々でしょう。政府のキャンペーンで任意後見を利用する人が増えるのか、任意後見の利用数の推移を見守っていきたいと思います。

2つ目は、後見人の養成です。家族の後見人になるかもしれない人、身寄りのない方の後見人になってあげたいと思う人などを対象に、2日間から40時間程度の「後見人養成講座」が、主に自治体や社会福祉協議会の主催で始まっています。自治体や講師により、内容や考え方は様々ですが、興味のある人は講座に参加してみるのも良いでしょう。後見人になるための講座とは別に、すでに、後見人になっている人や、家族に後見人がついている人向けのセミナーや座談会などもあります。後見人養成講座より、実務的で具体的内容であることが一般的です。

3つ目は、家族が後見人になることです。自分で後見人を決める任意後見制度の場合、約8割の方が家族や親戚などを後見人に選びます。家庭裁判所が後見人を決める法定後見制度の場合、家族が後見人に選ばれるのは2割程度に過ぎず、残りは弁護士、司法書士、社会福祉士などがなっています。すると、家族や本人の多くは、「家族がいるのに、なぜ見ず知らずの人が後見人になるのか」と詰め寄ります。

これに対し、家庭裁判所が具体的な説明をすることはありません。人事については文句が言えないとか、家庭裁判所がどのような理由で見ず知らずの他人を後見人にしたのかを説明する義務がないことが、家庭裁判所が説明しない要因です。しかし、この現状に成年後見制度の利用者の多くが納得していません。現状を踏まえ、成年後見制度を司る最高裁判所家庭局の後見担当者は、「後見人は家族が望ましい」という発言をしていますが、後見人を誰にするかは、全国の各家庭裁判所の、個別の裁判官が決めることになっています。最高裁判所が言うように、各地域で、家族が後見人に選ばれるようになるのか、注目されます。