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2023.03.29 更新

「高齢者といえば?」というクイズをご存じでしょうか。アメリカのパルモア教授が開発した、高齢者に関する50問の質問集です。50問の上位概念は9つあり、それぞれ、

@ 高齢者といえば、病気がちである
A 高齢者といえば、性的に不能である
B 高齢者は、醜い
C 高齢者は、知能が衰えている
D 高齢者といえば、認知症である
E 高齢者は、役に立たない
F 高齢者は、孤立している
G 高齢者は、貧しい
H 高齢者は、みじめである

となっています。

これらの、一般的なイメージと、高齢者に関する調査研究の結果や成果を照らし合わせ、「科学的に正しい知識」や「事実に基づいた言動」を高齢社会に伝え広めていくことが、このクイズの主な目的です。その背景には、「高齢者は○○である」という固定観念が社会全体にはびこっていて、それゆえ、高齢者が不当に扱われているという問題意識があります。このギャップを、エイジズム(年齢差別)と言います。アメリカでは、人種による差別、性による差別に続き、年齢による差別も禁止されています。

一例として、日本における「要介護」という観点で考えてみましょう。「年を取れば要介護状態になる」と考える人は多いと思います。しかし、実際は65歳以上の高齢者のうち要介護状態の人は2割程度です。逆に言えば、8割の人は要介護状態ではありません。年齢とともに要介護状態になる割合は高くなりますが、85歳以上でも、一番軽い要介護1の方が最も多く、一番重い要介護5が最も少ないのです。つまり「年を取るほど要介護度が重度化する」という考え方も、高齢者すべてに当てはまるわけではないのです。

多くの人はそこまでの実態は知らないでしょう。そして、「高齢者=要介護状態=病気がち=役に立たない=おとなしくするのが本人のため=外出は危ない=外出しても理解できない=社会性がなくてもいい=人とのつながりに関する手配や支払いを後見人はする必要がない」という考えになってしまいがちなのです。そのような高齢者全体に対する一般的認識が、個別対応を鈍化させ、「高齢者といえば・・・」ましてや「認知症高齢者は・・・」さらに「被後見人ともなれば・・・」とエスカレートして、「だからこれでいい」となってしまうのでしょう。

被後見人の代理人である後見人が「被後見人=ダメな人」と決めつけては、元も子もありません。後見人のそのような行為が、被後見人の社会的孤立を助長させてしまうからです。

後見人の極意は、「被後見人がそうするであろう様にすること」です。ところが、不勉強ゆえ、高齢者に対する事実を知らず、狭い個人的見解のみをもって「高齢者はこうだ。したがって、この人もこうに決まっている。私は後見人だ。する・しないの権限は私にある」などと、根拠のない自己肯定は大変危険です。家族だろうが専門職だろうが、高齢者の後見人になる人は、高齢者に関する科学的知識を持ちつつ、目の前の高齢者の個性に合わせて、自らの仕事をすることが必要かつ重要と言えるでしょう。

高齢者に関するクイズを構成する9つのカテゴリー