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2023.03.19 更新

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資料33は、兵庫県の補助案件です。平成26年9月、昭和12年生まれの方に補助人がつき、その補助人に同意権と代理権が家庭裁判所から与えられました。

2枚目は同意行為目録です。「以下の行為」の括弧書きとして、「日用品の購入その他日常生活に関する行為を除く」とあります。これは、例えば、被補助人が歯ブラシやトイレットペーパーなどの日用品をスーパーやコンビニエンスストア等で購入する場合、補助人の同意は必要なく、単独で取引ができるということです。言い換えると、その取引が被補助人にとって無駄な取引であっても、補助人によって取り消すことはできない、ということです。

そもそも成年後見制度は、不動産売買などの大きな取引において、判断能力が不十分な人に損が発生しないようにすることを目的としており、スーパーやコンビニエンスストアなどでの日用品の購入やその他日常生活に関する行為などは保護の対象としていません。
なお、日用品の購入やその他日常生活に関する行為の範囲や金額が具体的に明記されていませんが、およそ3万円以下の取引と思っておけば大丈夫でしょう。

さて、この事案では4つの同意行為が記載されています。これは、民法13条第1項に定められた9項目のうちの4項目ということです。

1の(1)預貯金の払い戻しの意味は、補助人の同意がないと、被補助人は自分の預貯金口座からお金を下ろせないということです。銀行での現場をイメージすると、被補助人が銀行の窓口に行ってお金を下ろそうとしたとき、銀行員は、被補助人に「補助人の了解がないと払い戻しができません」とか「補助人から同意をもらっていますか?」と聞くでしょう。そのように言われた被補助人は、補助人に電話をして事情を話します。そして、銀行員に電話を代わり、補助人が「同意するので、本人の取引に応じてください」と言えば、銀行は本人が要求する金額を払い戻します。

補助人が「同意しない」と言えば、銀行員は被補助人に「補助人からの許可がでないので、申し訳ございませんが、今日は払い戻しに応じることはできません」というでしょう。そう言われた被補助人は「私のお金なのになんで?」と感じるであろうことは想像に難くありません。

1の(2)も同様で、被補助人が誰かにお金を貸そうとした場合、利息をつけて貸すのならば補助人の同意が必要ということです。ただし、利息をつけないのならば、補助人の同意に関係なく、被補助人は誰かにお金を貸すことができます。

なんでもダメダメと言われたら、被補助人だって頭にくるでしょう。そのような時のために、被補助人は、家庭裁判所に対し「補助人はダメというけれど、家庭裁判所もダメだと思いますか?お金を下ろす許可を出してください」と申し立てることができます。この申し出を受けた家庭裁判所は「お金を下ろすことを許可する」とか「お金を下ろすことを許可しない」という審判を出すことになります。こういった家庭裁判所に対する「直談判」、生々しくて私は結構気に入っています。