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2023.03.19 更新

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資料32の登記事項証明書を読み下すことができれば、成年後見制度の知識がかなりあると言えるでしょう。後見の知識に覚えのある方は、この保佐人は何ができるのか、また、できないのか、解説を読む前にこの登記事項証明書を見て考えてみてください。

1枚目から、場所は福島県、被保佐人は昭和14年生まれであることがわかります。現在の保佐人Aは、平成30年5月9日、保佐人に就任しています。その下に、保佐人であった者という記載があります。日付をみると、保佐人Bは、平成27年2月5日、保佐人に就任し、平成30年5月8日、保佐人を辞任しています。このケースは、保佐人Aは被保佐人の息子、保佐人Bは弁護士でした。弁護士が保佐人を辞め、息子が保佐人になったということです。

2枚目をみると、保佐人Bに与えられた項目が1から12まであります。それぞれの内容をおおまかにいうと、1から8まではお金に関すること、9は権利証や実印などに関すること、10と11は介護や医療に関すること、12は裁判に関すること、です。

代理行為目録の右肩に「取消し」と書いてあります。つまり、ここに記載されている項目は「もう、ない」ということです。1枚目の記載によると、取り消されたのは平成30年5月8日です。同日に、保佐人Bは辞任しています。Bが保佐人を辞めると同時にBについていた代理行為目録も消滅したのです。

ところで、保佐人Aには、保佐人Bにあった代理行為目録がありません。このケースの登記事項証明書は全部で3枚ですが、3枚目にも代理行為目録はありません。何も書かれていない保佐人Aはいったい何ができるのでしょう?

答えは二つあります。一つは、保佐人Aが、被保佐人に代わってできること、してよいことは何もないということです。もう一つは、保佐人Aは、被保佐人が、以下の行為をするにあたって、同意するかしないかを相手方に伝えることができるということです。

保佐人の同意を要する行為は

  • 元本を領収し、又は利用すること
  • 借財又は保証をすること
  • 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
  • 訴訟行為をすること
  • 贈与、和解又は仲裁合意をすること
  • 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること
  • 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること
  • 新築、改築、増築又は大修繕をすること
  • 民法602条に定める期間を超える賃貸借をすること、すなわち、「10年を超える栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借」、「5年を超える土地の賃貸借」、「3年を超える建物の賃貸借」、「6か月を超える動産の賃貸借」

の9つとなります。

書いていないのに、どこからそのようなことを読み取れるのかと思う人は多いでしょう。これらの項目は民法13条「保佐人の同意を要する行為等」で決まっており、保佐人には当然に付与される権限となっています。法律で決まっていることだから登記に載せなくても権利はある、ということです。