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2023.02.27 更新

そもそも、家庭裁判所は、この人なら大丈夫と思って後見人・保佐人・補助人を選んでいるので、そこに、後見人・保佐人・補助人を監督する人までつけるとは、制度上想定されていません。
実際、成年後見制度が始まった当初は、監督人がつくことはほとんどありませんでした。そのことは、下表を見ると明白です。しかし、2005年頃から、家庭裁判所は監督人を多用するようになりました。

 

最高裁判所 司法統計より作成

 

家庭裁判所が監督人を多用するようになった背景には、後見人等による使い込み事件の発覚がありました。それ以降、親族後見人に対して司法書士の監督人をつけたり、司法書士の後見人に弁護士の監督人をつけたり、弁護士の後見人に弁護士の監督人をつけるという具合で、監督人がどんどん増えています。

被後見人の資産を使い込んだ案件に監督人がつくのならわかるのですが、家庭裁判所が「使い込みそうだから」と判断し、監督人をつける運用は適切とは言えません。また、実際には、「使い込みそうだから」ではなく、被後見人の財産が多い場合につく、ということになってもいます。財産が多いというのは、預貯金が1200万円以上であることが一般的です。

監督人の仕事は難しくありません。後見人が家庭裁判所に提出する書類をチェックするだけと考えてよいでしょう。時間的には、1〜2時間あればできることが多いようです。手間暇がかからない割に、監督人報酬は年間20万円から60万円くらいと高額であることが一般的です。監督人なんていらない、無駄なお金が出ている、家庭裁判所が監督業務を民間委託しているだけだ、という声が後見の利用者から多数あがっているのも頷けます。

監督人をつける際の家庭裁判所の手続きにも問題があります。監督人をつける場合、家庭裁判所は、「このような理由で監督人をつけるけれど、よいですか?」と、被後見人に話を聴かなければならないという法律があるのに、それをせずに監督人をつけることが少なくないからです。

法の番人である裁判所が、違法な行為をしているのですが、背景には、「聴いてもしかたないほどに本人の状態が悪い場合は本人に聴かずに監督人をつけてよい」という但し書きがあります。聴いても仕方ないほどに本人の状態が悪い場合とは、どのような場合なのか。これについて、法務省の審議官の書籍に「植物状態の場合」と書かれています。植物状態の場合、本人は話ができないので、聴いても仕方ないから聴く必要はないでしょう。しかし、植物状態である被後見人はほとんどいません。認知症や知的・精神障害の人の多くは、ある程度のことはわかる場合が多いのです。つまり、聴かずに監督人をつけることは但し書きの範囲を超えており、家庭裁判所は家事事件手続法に違反して監督人をつけているといえます。

そんなことをして大丈夫なのかと思うでしょうが、「家庭裁判所の人選に対する不服申し立てはない」という別のルールを盾に、監督人をつけます。成年後見制度の利用者から監督人に対する不満が増えるのは、当然と言わざるを得ないでしょう。