右コントローラから音声案内を聞くことができます
 
2023.02.12 更新

資料を拡大して読む<PDF>

ある人の、後見人、保佐人、補助人になろうと思う人は、「後見人等候補者事情説明書」に自らのプロフィールなどを書いて、家庭裁判所にアピールします。
後見人になるのに特段資格は必要ありません。家族でも、友達でも、弁護士でも、NPO法人や株式会社といった組織や団体、会社でも、家庭裁判所が選べば、ある人の法定後見人になることができます。

「後見人等候補者事情説明書」(資料26)の中身を見ていきましょう。

1では、候補者の学歴や職歴、現在、どんな仕事をしているか。それによりいくら稼いでいるか。貯金はいくらあるか。不動産を所有しているか。借金はあるか。健康か。持病はあるか。誰と住んでいるか。共働きなどの場合、相方の年収はいくらか。などを書くことになっています。ずいぶんと根掘り葉掘り聞くなあという印象を受けるのではないでしょうか。

2では、法律上、後見人の欠格事由に該当しないかを確認します。現在の法律では、後見人になれない人が規定されています。5種類あって、具体的には、次の通りです。

  • 未成年者。つまり、結婚をしていない18歳未満の人。
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人。つまり、過去に後見人や保佐人や補助人をしていたが、家庭裁判所から解任されたことのある人。
  • 破産者。つまり、自己破産をして復権していない人。
  • 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族。つまり、被後見人と裁判をやっている人およびその親族。
  • 行方の知れない者。

つまり、子どもが大人のお金を管理するのは良くない。過去に首になった人に後見を任せられない。自分の財産を管理できない人に他人の財産を任せられない。けんかしている人に後見を任せられない。どこにいるかわからない人に後見を任せられない。ということになります。このいずれかに該当しなければ、後見人に選ばれる可能性があります。

3では、後見する側と後見される側の関係を記載します。具体的には、親族か他人か。一緒に住んでいるか、そうではないか。一緒に住んでいない場合、本人と会う頻度はどの程度か。本人と家計を共にしているか別か。本人の介護や援助を行っていればその内容を書くことになっています。

4では、後見する側とされる側に、お金の貸し借りなどがあるかないかという項目です。ここで「あり」となると、借用書や立替払いを示す領収書・出納帳のコピーを添付することが求められます。
ちょっと不思議なのが、「貸したお金を返してもらいたいか、返してもらわなくてよいか」という項目があることです。「借りたものは返す」というのは常識なのに、どうしてこのようなことを後見の世界で聞くのでしょうか。
それは、後見人になった場合、被後見人のお金を、後見人が自分の手で、自分に返すことになるからです。それのどこが悪いのかと思う人もいるでしょうが、ここで貸し借りを書いておかないと、あるいは、返してもらいたいという意思表示をしておかないと、家庭裁判所の圧力で、後見人でいる間は返してもらえないことになりかねません。
お金を返してもらいたいのなら後見人を辞めろとか、別の人に後見人を替わってもらえとか、貸し借りがあるのなら別の人を後見人にしよう、というのが家庭裁判所の運用の現状です。