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2022.03.31 更新

自分で報酬を決める任意後見と異なり、法定後見においては、後見人の報酬額は家庭裁判所が決めます。


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金額は、わかりやすく言えば、後見人が何をしたかではなく、被後見人がいくら持っているかに比例して決まると考えてよいでしょう。
つまり、お金持ちの後見人になったら報酬は高額で、そうでなければ同じ仕事をしても少額となります。

お金持ちと言っても、不動産が多い場合、後見報酬はさほど上がりません。
株より保険、保険より預貯金の額に比例し、後見報酬は上がっていくと考えてよいでしょう。

資料15は、横浜家庭裁判所が公布している「成年後見人等の報酬額のめやす」です。

「1 報酬の性質」 のポイントは
 ・ 後見人の報酬は、被後見人の自己負担とする
 ・ 金額は、家庭裁判所が決める(文句は言えない)

「2 基本報酬」 のポイントは、
 ・ 成年後見人になれば月額2万円はもらえる
 ・ 被後見人の預貯金等が1〜5千万円ならば、後見人は月額3〜4万円もらえる
 ・ 被後見人の預貯金等が5千万円以上ならば、後見人は月額5〜6万円もらえる
 ・ 後見監督人の報酬は後見人の半分とする

「3 付加報酬」 のポイントは、
 ・ 介護や医療に関することは基本報酬の50%まで上乗せ可能
 ・ 裁判を通じて1千万円勝ち取れば、80〜150万円上乗せ可能
 ・ 遺産分割協議を経て2千万円取れたら、55〜100万円上乗せ可能
 ・ 3千万円相当の不動産を売却したら、40〜70万円上乗せ可能

「4 複数成年後見人等」 のポイントは、
 ・ 人数で報酬を分ける

通常、後見報酬は、後見人が家庭裁判所に「後見事務報告書」と呼称される業務レポートを提出し、「これだけの仕事をしました。報酬はいくらになりますか」というやりとりで決まります。

9ヶ月間の業務期間で800万円を超える後見報酬を得ている後見人がいました。
その後見事務報告書を見ると、9ヶ月の業務期間中に後見人がしたこととして、相続をめぐる親族間の調停を経て1千万円近い額を被後見人のために取ってきたことが書かれていました。
先の横浜家庭裁判所の資料によれば、「裁判して1千万円獲得したら80〜150万円を上乗せする」とあるので、それくらいかなと思いきや800万円を超える額だったというわけです。
なぜそんなに高いのかと思い、その地域の家庭裁判所の資料を見てもそんなことは書いてありません。しかし、横浜とその地域では7倍程度の格差があることになります。

「裁判で1千万円とってきて、後見人が800万円も持っていくのはおかしい」と思い、被後見人の相続人は「後見報酬が不当に高い」と裁判所に文句を言いましたが、「後見人の報酬額は裁判官が決めることになっている。本件も裁判官が決めているから違法性はない」と裁判所は歯牙にもかけませんでした。
「こんなことがあってもよいのですか」と後見業界では著名な法律家に尋ねたところ、「裁判官の間違いだと思う」とのことでした。
後見報酬については苦情が多く、複雑怪奇と言わざるを得ません。