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2021.12.08 更新
成年後見制度は、判断能力が不十分になった人に代わって、銀行や介護施設との取引等を行う後見人を定め、後見人の業務を家庭裁判所が監督する仕組みです。認知症や知的・精神障害等を抱える方が利用します。

現在の成年後見制度は、1896年(明治29年)の禁治産制度を改定し2000年からスタートしています。そのタイミングで改訂された背景には、それまで行政による措置で無償提供されていた介護サービスを、介護保険制度創設により契約(購入型)に切り替えるにあたり、契約者の多くが認知症で介護取引がままならないという事情がありました。

成年を後見するという「概念」は日本の伝統芸能である能や歌舞伎にその由来があると言われます。本来ならば自分ですることを他人がさりげなく行うという概念を「民法」に落とした現在の成年後見制度は、自分で将来の後見人を定める任意後見と家庭裁判所が本人の後見人を定める法定後見に大別されます。

法定後見は、その対象者によって運用が異なります。未成年を対象とする法定後見を未成年後見、成年を対象とする法定後見を成年後見といいます。

未成年後見は本人(未成年被後見人)が成年になるまで、成年後見は本人が亡くなるか回復するまで継続されることになっています。

成年後見は、その成年者の能力(もしくは障害の程度)により3つに分類されます。いつも何もわからない状態を「後見」と言います。わかることが半分くらいわからないことが半分くらいの状態を「保佐」と言います。だいたいのことはわかるが上手くいかないこと(例えば不動産売却)がある状態を「補助」と言います。介護保険制度でいうなら、後見は要介護5、保佐は要介護1〜4,補助は要支援1〜2と考えてよいでしょう。

成年後見制度は、認知症や知的・精神障害等を合計した1千万人(世帯)に関係してきます。しかし、その利用実績を見ると、任意後見は年間1万件強、法定後見のうち成年後見は年間3万件強になっています。つまり年間4万件強となるのですが、この数字は、同様の制度がある欧米に比して極端に少ないと言われています。「家族がいるからなんとかなるだろう」「自分は認知症にならないから関係ない(と思いたい)」という人が諸外国に比べ日本には多いのかもしれません。

成年後見法という専用の法律はありません。成年後見制度は、民法、家事事件手続法、任意後見契約に関する法律、後見登記等に関する法律をもとに、各地の家庭裁判所(主要50か所)および支部で日々運用されています。

2016年に施行された成年後見利用促進法を契機に、関係諸機関で成年後見制度の使い勝手を向上させる方策が検討・実施され、いよいよ、2022年4月から、成年後見制度の利用促進が全国各地で実施されます。超高齢社会において、適切な医療や介護が利用されるようになることが期待されます。